水庫也泰 みずくらなりやす
1963年生まれ、東京都出身
受賞;カメラ雑誌のフォトコンテスト入賞、佳作等
主な活動場所; 東京都内
主な専門領域; 昆虫写真、植物写真、女性ポートレート
愛用の写真機;CANON EOS 40D
近頃では、昆虫は特別の場所に行かないと見られないと思うのですが。
とくに東京では。
昆虫のいる場所をご存知なのですか。
「昆虫の居る場所」っていうのは、別に特別な場所ではないです。
東京都内でも、公園や道端の植え込みなど、どこでも『昆虫のいる場所』です。
普通の人よりは、昆虫の事を気にして歩いているので、昆虫を探している事になるんでしょうけど、それほど特別に「今日は昆虫を探すぞ」って構えている訳ではなく、散歩の途中に目に入った昆虫を撮影する、って感じでしょうか。
皆さん、あまり気にしていないから気付かないだけです。
東京にもいたる所に昆虫はいるものです。
昆虫とのかかわりについて、教えてください。
子供の頃って、みんな昆虫好きですよね。とくに男の子は。
私もそんな昆虫好きな少年でした。
東京の下町育ちの私は、豊かな自然に恵まれた環境で育ったとは言いにくいのですが、友達と一緒に、近所の空き地にバッタやカマキリを採りに行くのが大好きでした。
そんな少年も、歳を重ね中学高校となると、空き地に昆虫を採りに行く事なんかなくなり、いつしか昆虫と関わる事なんてなくなって、普通の大人になっていったんです。
とはいえ、自然の生き物が好きな事には変わりなかったので、テレビや本などを通じて、虫に接する事は続けていました。
昆虫を撮影しはじめたのはいつごろですか。
30歳を過ぎた頃です。
デジカメを買った事を機会に、カメラを持って散歩するようになると、都内の公園でも色々な昆虫がいる事に気付きました。
子供の頃を思い出し、近所の空き地で「採って」いた昆虫を、今は虫取り網をカメラに持ち替えて「撮って」いる、って感じです。
ちなみに、私が育った昭和40年代の下町より、今の都心の公園の方が沢山昆虫がいる気がします。
下町育ちの私は、野生のカブトムシは見た事がありませんでした。
昆虫好き少年でしたから、もちろんお店で買って貰ったカブトムシは飼っていましたが、野生のカブトムシを初めて見たのは、昆虫写真を撮るようになってからです。
40のおやじがテンション上がりました(笑)。
昆虫の顔の表情が見えますね。どこまで、接近していくのですか。
マクロレンズを使って撮影する事が多いので、凄く近づきます。
上手くいけば、レンズフードが昆虫に触れそうになるくらいです。
自然と昆虫との色合い、構図バランスが絶妙ですね。
「何を」いちばん写したいとお考えですか。
当初は、色々な昆虫を撮りたくて、今まで撮った事のない昆虫が写っていればそれで嬉しかったんですね。
最近は、特にカッコいいコンセプトは無いですが、
単純に綺麗に撮りたいと思っています。
全体の構図や色合いはもちろんですが、光を上手く扱いたいですね。
昆虫の顔の表情が自然の不思議さを映していて、
芸術的な神秘性を感じます。
芸術というのは、ちょっとカッコよすぎです(笑)。
ただ、あえて言うなら、自然そのものが本来、芸術的なんですね。
特に昆虫なんか、皆さん、あんまり気をつけて見ないから気付かないだけで、じっくり見れば、美しさの宝庫です。
シャッターを切る瞬間、昆虫の顔が見えていますか?
顔の表情を見ながら撮影、というとカッコイイですが、
基本は昆虫の複眼にピントを合わせるので、自然に、昆虫の顔を見ていることになりますね。
カマキリなんかは、逆にレンズを睨んで威嚇してくる感じで、とても面白いです。
昆虫たちはダンスや音楽を楽しんでいるようです。何が魅力ですか。
ただ単に、その昆虫の姿形だけでなく、その生態を表している行動を写すことが楽しいですね。
昆虫も、顔だけじゃなく、身体全体に「表情」があるように感じます。
求愛行動や産卵シーン、獲物を待ち伏せしているところや捕食シーンなども魅力的です。
これまで最も気に入った昆虫の写真を一枚、教えてください。
やはり、首をかしげたカマキリの写真が一番気に入っています。
昆虫ではありませんが、クモの写真も好きです。
昆虫を写す難しさとは何でしょうか。
昆虫は動きますからねぇ。
逃げられないギリギリの距離まで近づいて写す、その距離感ですかね。
種類によって、その距離が違いますが、どれくらいまで近づけるか、慣れてくるとなんとなく解ります。
実際には、いきなりギリギリまで近づくと逃げられる危険が高いので、まずは安全な距離で写しておいて、それから徐々に近づく、
という感じになります。
これから、どのような写真を撮っていきたいですか。
特に立派なコンセプトは無いのですが、一般の人が見て、単純に綺麗だと思ってもらえる物が撮りたいです。
昆虫写真でいえば、虫嫌いの女性にも綺麗だと思って貰えて、昆虫好きになって貰えるような写真が撮れれば嬉しいです。
昆虫写真に限らず、植物でも野鳥でも、身近な自然の美しさに気付いて貰えるような写真が撮りたいですね。
昆虫の他にも、いろいろな作品を手掛けていますね。
女性のポートレートも好きです。
昆虫にしろ女性にしろ、やはり自分の好きな被写体を美しく撮る、って言うのが楽しいです。
私の中では、世の中で、好きな物、美しい物は、自然と女性、って事になるんでしょうかね(笑)。